玉木宏の潜水艦長役は・・・
「真夏のオリオン」を観てきました。
僕は潜水艦を舞台とする戦争映画が大好きで、とくにドイツ映画の「Uボート」は何度も何度も観ています。
イケメン俳優の玉木宏が艦長役と聞き、さて、あの優男がどんな艦長を演じるのか、とても興味がありました。潜水艦艦長といえば、洋の東西を問わず、映画で演じるのは渋いタフガイ俳優と相場が決まっていますから、玉木宏のキャスティングは、ちょっとドキドキする期待感があります。
この映画、かなりの秀作だと思います。潜水艦という暗く、孤独な、死の臭いが漂う舞台装置を使い、これほど軽く、淡々と戦争を描いた作品には、あまりお目にかかったことがありません。
まず、悲惨なシーンが非常に少ないのが特徴です。人が死ぬ場面も最小限だし、潜水艦は沈まないし、主人公も死なない。絶望よりも希望に重きを置き、それをシナリオで実際に表現してみせた戦争映画です。
「Uボート」は、激戦をかいくぐって帰港した港で、あと一歩で生還というタイミングで空襲を受け、沈みゆく潜水艦を見届けながら艦長も息絶えるという悲しい結末。最近の日本映画では「ローレライ」がありますが、こちらも、艦載の大砲で(奇跡的にも!)原爆を抱いて飛び立つB29を打ち落とし、日本本土へのさらなる攻撃を食い止めたあと、米軍の猛追を受けて壮絶な最期を遂げます。ところが、「真夏のオリオン」には、観客が絶望に涙するようなシーンがまったくない。
たとえば、日本の潜水艦が大破して浮上し、米国の駆逐艦が艦砲で撃沈できる場面で、駆逐艦の艦長は「離艦する時間を与えよ」と指示して、主人公をはじめ乗組員は一命をとりとめる。そんなシーンを、ドラマチックに描くわけでもなく、まるで日常的な光景のように、自然体で見せてくれます。
それに接すると、天皇陛下万歳を叫んだ玉砕もたくさんあったにせよ、「ムダな人殺しはしたくない」「助かるなら生き続けたい」という、人間本来の正直な気持ちが通う場面が、あの悲惨な戦争にもあったのだろうな、と、当たり前のことに、今更ながらはっとするのです。
玉木宏も、彼ならではの飄々とした、それでいて嫌みのないスマートさと、心の強さを併せ持つ艦長役を演じてくれました。ちょっとでもバランスが崩れると、置かれた状況とのミスマッチが際立つ立場だけに、高く評価すべき演技だったと思います。
日本の戦争映画は、極端な精神主義か、それと裏腹の悲壮感がどうしてもクローズアップされ、人間の描き方のバランスを欠いているように思えてなりません。こうした映画がもっと出てくることを期待します。











