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戦争と報道について

金平茂紀さんというTBS報道局長が書いた「テレビニュースは終わらない」(集英社新書)を読みました。メディア論としては、なかなかの大作。読み応えあり、です。

テレビ報道は、とくに政治のPRにおいて、とても重要な研究対象になっています。いわゆる報道番組だけでなく、バラエティーや情報番組まで、今の政治はテレビが動かしているといっても大げさではありません。

しかし、反対側から見れば、政治がテレビを使って政治を動かしている、という側面もあるわけで、一言でいえば、テレビは政治のメカニズムのひとつ、「プレイヤー」であるといえます。

金平さんは、そうした現状を憂えるテレビ・ジャーナリストのひとり。テレビ報道に批判精神がなくなっていることを危惧しています。この手の論調は、外部の評論家などからはたくさん出ていますが、テレビで実際に働いている現役のジャーナリスト(それも報道局長という大幹部)が、現職時代に発表することは、きわめて珍しいし、勇気のいることだと思います。

僕にとって有意義だったのは、日本よりもアメリカをはじめとする欧米で進んでいるテレビ報道の問題点について、詳細に知ることができたこと。金平さんはモスクワ、ワシントンに駐在歴があり、それらの事情に詳しいのです。

アメリカ大統領選挙が完全にテレビショー化していること、イラク戦争をめぐって、アメリカのテレビ報道が、まるで“愛国心競争”の様相を呈したこと、戦争現場に派遣されるクルーが特殊部隊出身者らによる武装チームを「護衛」につけるのが一般的になり、その是非をめぐって欧米ジャーナリズム界に大論争が巻き起こっていること。

どれも大きくて重く、簡単には結論が出ない問題ばかりです。

こうした記述に触れると、小泉さんの郵政選挙以来、日本で議論になっているテレビ報道の問題など、まだまだ小さい、と思えてきます。

戦争と言えば、記者時代に同僚と、面白半分で、こんな話をしたのを思い出します。

「明日、日本が戦争を始めたら、本記(一面記事)はどこ(の部署)が書くんだ?」

「やっぱり政治部だろう。官邸で発表するだろうから」

「じゃあ、おれたち社会部は『受け』(社会面に載る記事)か」

「・・・結局、『なんとか三勇士』とか『三人息子を戦地へ送った母の美談』とか、そういうの書きそうだよな」

「なんか、昔と変わらないような・・・」

つまり、想像力が及ばない領域なのです。よその国の戦争は、対岸の火事のような気楽さで、なんとでも書けても、自分の国が戦争した記事を書いたことがある記者なんて、1人もいませんから。

本当にどうなるのでしょうね。。。

戦前・戦中の大本営発表垂れ流し、政府と軍部のプロパガンダ機関になりさがった反省から、戦後のジャーナリズムは出発したはずですが、戦争自体、その議論自体がタブーとなったせいで、当のジャーナリストたちは、何の準備も心構えもなく、対策も講じていないのが実情です。(この点は、哀しいことに国会も同じだと思います)

イラク戦争を通じて、アメリカで見られるメディアの状況は、日本でいえば戦前回帰ととれる愛国心至上主義だけでは語れません。メディアが巨大情報産業に発展したがゆえの商業主義の影響、また、ブログに代表される個人メディアがマスメディアに与える作用が複雑に絡み合い、まったく新しい段階に突入しているようです。

いろいろなことを考えさせてくれた一冊でした。

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